「どうやら長い間待ち続けたお方が現れたようだ。いざ、母君のもとにご案内しましょうぞ」
「ふざけるな。母さんは死んだんだ」
「へっへっへっ。ペッ。人間のよくやる手だね。死んじゃいませんよ。失礼ながらあなたは母君のご遺体を見ていないでしょう。母君はあなたの助けを待っていますぞ」
「おいでくだされ、おいでくだされ、おいでくだされ」
「おいで、おいで、おいで」
どこに連れて行くつもりでしょうか?行かなければいけない理由があるのか。
「おいでくだされ、おいでくだされ」「おいで、おいで、おいで」
眞人はカエルに覆いつくされ見えなくなります。そこに夏子とおばあさん達が現れて・・・
アオサギ目掛けて矢を放ちます。
矢が飛んでくると、カエルは離れていき、アオサギはお待ちしておりますぞ!!
と言って飛び去ります。
アオサギのお待ちしておりますぞという言葉で、目が覚めます。
いきなり夏子が矢を放つなんて、少しおかしいですよね。やっぱり夢でした。
目を覚まし、納屋の木刀を見てみると
折れたはずの木刀がありますが、折れてはいない。やはり夢だったのか・・・
木刀は突然、バラバラに砕けてしまいます。夢じゃ・・・ない
食事の時に。「眞人さんのお口には合わないでしょう」
眞人「おいしくない」
食べているのは、米とみそ汁、漬物。だけです。
子供ですから正直で良いと思います。おばあさん達と同じものを食べていますから。
もし、眞人だけが食べて、おばあさんがお腹を空かせている場合や、よその家だとだめですが。
「はっきりおっしゃって、まったくね~」
このおばあさんはキリコさん。この先の展開に関係が深い人物です。
食事が終わり、部屋を出る眞人に。「お嬢様が眞人さんのお顔が見たいとしきりにおっしゃっていますよ。お見舞いくださいませ」 「病気重いの?」「つわりです。眞人さんの時もお母さまは大変でしたよ」
「奥様」 すっかりやつれてしまった夏子です。
眞人の部屋は質素ですが夏子の部屋は豪華です。眞人が部屋に入って見たこの場面、最初は父の背広を見たのかと思いましたが、弓を見たのですね。夢の中で夏子が弓を引きますが、夏子が弓を持っていることはこの時に初めて眞人が気づきます。
簡単な絵だと思って塗ろうとした時になんだこの壁は・・・壁の模様が全部違う。だいぶ簡素化して柄を変えてしまいました。こんな複雑な壁にしたのは夏子の部屋のゴージャス感を出すためですね。
「ごめんなさいね。こんな傷をつけてしまって」
夏子を描くのにとても時間がかかりました。美人を美人に描くのは絵描きの義務だと思うので、少し慎重に描きました。
「お姉さまに申し訳がないわ」
夏子はお姉さんの旦那を奪った罪悪感を感じていました。だからせめてお姉さんの息子は自分が守るんだという気持ちでいたでしょう。それなのにという思いで押しつぶされてしまいました。
ケガは眞人が自分でつけたものなのですが。
眞人はどう感じたでしょうか。自分が学校に行きたくないためにやったことで、こんなにも人を傷つけることになるなんて思ってもいなかったでしょう。自分が痛みを負うだけとしか考えていなかったのに。眞人「早くよくなってください」と言って部屋を出ます。
部屋を出る時にタバコを持ち出します。眞人は吸いませんが、食事の時におじいさんがタバコを吸っていました。
廊下に出ると聞き覚えのある物音に眞人は振り返ります。
もうサギの姿でなくなって、おじさんがサギの被り物を着ているような異様な姿になっています。
サギがまた出ることはわかっていた眞人はあらかじめポケットに何かを忍ばしています。
あのサギなら、ナイフぐらいは用意しますよね。
「お待ちしておりますぞ」と言って飛び去ります。まるでストーカーですね。よっぽど急いで連れていきたいのでしょう。
夏子の実家は広大です。家というより城ですね。
手前のボロ屋はおそらく使用人たちが使っているのでしょう。
夏子の部屋から持ち出したタバコはこのおじいさんにあげるためでした。刃の欠けたナイフのとぎ方を教えてもらっています。
それを見たキリコばあさんが「あっ、タバコ。もう、うまくたらしこんじまって」
そのナイフで
弓を作ります。あのサギを打つつもりです。
この作品「君たちはどう生きるか」は制作に7年の歳月をかけ、全編手描きによって作られました。60人のアニメーターで1か月で1分ほどの映像を制作するという近年のCGアニメとは正反対の非効率な方法にこだわりました。トトロは8人のアニメーターで8か月で制作されたそうですが、それも怖い話です。
こんな手描きの作品はもうこの作品が最後でしょう。もし、もう一度この作品を見ることがありましたら、じっくりとよく見てもらいたいです。
できた弓でさっそく試し打ちをします。
宮崎作品の現実的な描写です。初めからうまくいくわけないだろうという部分です。このシーンは漫画的に描いてみました。
それを見ていたキリコばあさん。「ぼっちゃん、坊ちゃん。ちょっと。ちょっと」と眞人を呼びます。
1場面にこれだけ細かく描けば、1年制作して12分の映像しか作れなかったというのは納得です。ほかのアニメはうまくごまかして描いてますから。私も描いていて、描きがいがあります。
「今、忙しいの」と不愛想に言います。
「耳寄りな話ですよ。ちょっと、ちょっと」
「ぼっちゃん。本物の弓矢ほしくない?ちょうど眞人さんぐらいの人向きの本物の弓矢ですよ」「鋼の矢じりもついてるし、弓だって、そりゃ立派な物でね。こっそりなら誰もわかりゃしませんよ」
悪い顔でささやきます
「・・タバコ?」
察しのいい眞人です。
「ひかり。1箱でどうかしら?」
「みんなじいにあげた」キリコ「えっ~」
「それに2本しか入ってなかった」と言って立ち去ります。
「あんなもうろくじじいに。ねっ、坊ちゃんったら」
庭に出てアオサギを探しますが見つかりません。ですがアオサギの羽を見つけて持ち帰ります。その羽を矢に付けるのです。
矢を取り付けるためにご飯粒を取りにダイニングに行きます。
廊下を通り部屋に戻る時にふと窓に目をやると・・
誰かが見えます。
白装束の若い女性が森に入っていきます。
屋敷に若い女性は1人しかいません。
いよいよアンダーワールドに入ります。2巻は終了して3巻に続く。このHPは多くの場面を省略しております。もし少しでも興味を持っていただいているのなら、本作を鑑賞することをおすすめいたします。より楽しめるはずです。