一度見た人に贈ります。注 まだ見ていない人でこれから見るという人は見ないでください。全部解説しますので。
もう一度、セリフの一つ一つを描き出しながら見ていくと、すべてのセリフがとても意味のある言葉だとわかりました。今までにない傑作だなと思い始めています。
初見ではこの作品の良さはわからないかもしれません。最後に自分の本当に作りたい作品をお創りになったのではないでしょうか。改めて素晴らしい作品です。
ただ、少しわかりずらいですね。
では、よろしくお願いします
空襲警報が鳴るところから始まります。
その音で目が覚める眞人(まひと)。この名前に大きな意味があります。
真の人間になってほしいという願いを込めた名前です。物語の根幹でもあります。
2階に上がると、お父さんが走って家を出ます。すれ違いに(お母さんの病院が火事だ)と言います。
眞人が外を見ると、燃え盛る病院が。
火事の絵を描いた人なんて、ほとんどいない。毎回、どう色を塗るべきか、考えてしまいます。
かあさん。
町の民家も火事で、消火を行う消防隊員、家族を呼ぶ町民、あてもなく彷徨う人達をぬって病院へ走る眞人です。火の粉をかぶりながら、おかあさんと呟きます。
戦争3年目でお母さんが亡くなり、4年目に東京を出る。
初めて見たときには気にしませんでしたが、お母さんが亡くなってからまだ1年しかたっていません。これで、この後の展開が理解できました。
この作品で現実世界を作品を通して表現していますが、現実に起こっていることにいいとか悪いとかは言えません。私にはその資格がないからです。
自分の立場が変われば、考えが変わるのがわかっているからです。
目の前で見るのと、宇宙の広い視点で見るのも違います。善悪も誰の立場かによって変わります。ただ、この作品を解説するだけです。それだけです
来たよ
その人はかあさんにそっくりだった。
この人は夏子。お母さんの妹。姉でお母さんの名前はひさこ。
お母さんは違う世界で登場しますが、名前が少し変わっています。それは後程。
赤ちゃんの時に会ったきりなので、お互いにこの時初めて顔を見たのです。
立派になられて。
眞人と夏子は夏子の実家に向かいます。その時に夏子が眞人に言います。
私、眞人さんの新しいお母さんになるのよ。手をかして。動くのわかる?
赤ちゃん。眞人さんの弟か妹よ。
お母さんが死んで1年後、妹の夏子のお腹が大きくなっています。
つまり、亡くなって数か月でしてしまったということです。
この後の夏子の苦悩がこれでわかりました。心が病んでいて当然です。
大きな罪悪感を背負って苦しんでいるのはこの場面からは知ることができません。
2回見て、なるほどと思いました。なぜそこまで苦しんでいるのかが1回目に見た時に気付きませんでした。
この後、夏子の姉であり、眞人のお母さんが登場しますが、お姉さんの妹への言葉で妹への優しさがわかります。その優しさを裏切ったという気持ちはとても重いものです。
「お父さんの新しい工場ですよ。」
夏子は田舎ではあるけれど、城のような家に住んでいる資産家です。
眞人のお父さんも軍事関係の製造業を営む、おそらく社長です。
姉のひさこが亡くなり、もしかしたらお金持ちの生活を守るために、夏子は子供を作ったのかと思ってしまう。土地や家があっても、お金がない人はいますから。
本当のところはわかりませんが・・
眞人を出迎えるアオサギ。宮崎監督が意味もなくアオサギを使わないと思って調べるとアオサギは日本では神の使いだということです。作品でもそのような役割でした。もう一つにはケルト人に伝わるものです。もともとケルト人は自然崇拝多神教、巨石崇拝など日本人と同じ宗教観念を持っています。そのケルト人にとってアオサギは天と地を行き来できると考えられ、神のメッセージだと捉えていました。
監督がアオサギを登場させた理由はこのあたりからだと思います。
夏子の屋敷では9人の使用人がいて、そのうちの一人は病人です。
みな高齢ですが、とても楽しそうにしています。ということは夏子の人柄もそこから知れます。とても暖かく、優しい人なのです。そうでなければ、年寄りがこんなに楽しそうにいきいきしているはずがないからです。しかも病人まで面倒を見ているのですから。優しい人だから苦悩も大きいのです。
部屋に入るとすぐに眠ってしまい、お母さんの夢を見て涙を流します。
まだ亡くなって1年ですから
眞人の寝顔を見る夏子。おばあさん達がお母さんにそっくりで驚いていました。
自分の姉に似た眞人を見て何を思うのでしょうか。
夏子は個人的にはジブリ作品で一番綺麗な女の人だと思っています。
お屋敷の敷地の中の離れに謎の棟が建てられている。
アオサギがその棟をねぐらにしている。
あの塔は私たちの母の大叔父様が建てたものです。
大叔父はどう見ても日本人ではない。生きていれば90歳ぐらいだろうか。
ある日、その大叔父が失踪してしまった。大雨の後に棟の地下に迷路のようなトンネルが見つかり、危ないので穴をふさいでしまった。眞人さんも近づいてはいけませんよ。
眞人が学校に行くことになりました。校庭の正面に車を止めると、先生が頭を下げます。この時、すでに1人の生徒が飛びかかろうとしています。
戦争中、みんな食べるものがなく、生きるのに精いっぱいでした。
金持ちというだけで、目の敵のように思われていました。子供には反感を買う行為ですが、先生に自分の権力、財力を見せつけて、自分の子供を頼んだぞと、言っているようです。生徒が大きなカゴを持っています。何だろうと思っていましたが・・・
初対面で、いきなり睨まれています。金持ちだからって、いい気になるなよ。
と貧乏人の金持ちへのひがみ、妬みです。
学校の帰りに、草刈りをする生徒たちに遭遇する。生徒がカゴを持っていたのはこの為でした。何でお前は草刈りしないんだ。偉そうに!と言っているのでしょうか。取っ組み合いの喧嘩になります。
少し汚れていますが、ケガはしていないようです。
眞人は地面に落ちている大きな石を拾い上げると、その石を自分のこめかみに向けて、おもいっきり・・・
なぜこんなことをしたのか。この痛みを耐えてでも、学校には行きたくなかったからです。憎しみの目で見られるのはお金持ちだからですが、それは眞人にはどうすることもできない現実で、変えることはできません。
いいやり方とは言えませんが、こんな傷を負ってでも学校に行かなくていいのなら、我慢できる。心の傷はもっと大きいということです。お母さんの死から1年、心も疲れきっているのでしょう
「誰にやられたんだ。お父さんが敵を討ってやるから。本当のことを言いなさい。」とお父さんが言いますが、眞人は転んだだけだと言います。お父さんがそれを信じないのはわかっています。眞人は喧嘩相手を憎くて、ケガをしたのではなく、学校に行かなくてよくなれば、それでいいのです。だから転んだだけとしか言いません。
眞人が一人になり、目をつぶると、窓の方から物音がして、「まひと~、たすけて。」と声がします。
「まひと~、まひと~」とアオサギがしゃべると、池に飛んでいきます。
池に行くとアオサギは「おかあさん、おかあさん」と言います。
アオサギは眞人を挑発しているようです。
眞人は翌朝、早くに目が覚めると、物置の木刀を手に持って庭に出ます。
朝日が差すほうを見ると、アオサギが一直線に眞人目掛けて飛んでいきます。
眞人は力いっぱい木刀でアオサギを叩きますが、木刀が折れてしまいます。
「お前は何者だ。只のアオサギじゃないだろう!」
木刀をくちばしでバラバラにしてしまうアオサギ。